双眼鏡で広がる世界『ラグビーを見る』ラグビー指導者|高橋一聡

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2019.10.28

双眼鏡で広がる世界

高橋一聡

プロフィール | PROFILE

高橋一聡

1971年東京都生まれ。
国学院久我山高でラグビーを始め、明治大学時代に大学選手権優勝を3度経験。ポジションはフォワード第3列のナンバーエイト。パワフルかつクリエイティブなプレーで活躍した。
大学卒業後は東日本社会人リーグ(当時)の伊勢丹へ進み、全国社会人大会でベスト8に進出。伊勢丹ラグビー部解散後はクラブチームの「ブルーシャークス」でプレーを続けた。
現役引退後は、ペットのトリミングショップ、ペット連れで入れるレストランなどを経営。一般社団法人Do One Good 代表理事。東日本大震災後はいち早く被災地へ入り、ペットを通じた支援など精力的に活動。震災以降、ほぼ月1回のペースでペットとペットの飼い主とつなげる「7iro CARAVAN」を続けている。
2013年から明治学院大学ラグビー部ヘッドコーチ、2018年から学習院大学ラグビー部ヘッドコーチを務める。

関東大学ラグビーの明治大学や明治学院大学でコーチ、ヘッドコーチを歴任した高橋一聡さんは、ラグビーの試合中に双眼鏡を愛用している。
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「一番大事なのは、選手を交代させるタイミングを見極めることです。その判断に双眼鏡は欠かせません」

ラグビーでは、ピッチでプレーする15人の他に、8人の控え選手がベンチに入る。8人全員、自由に交代させることができるが、一度交代した選手は戻すことができない(安全対策の関係で、スクラムを支えるフォワード第1列の選手は負傷でプレー続行不可能になった選手の補充のみ再出場可能)。コンタクトスポーツであるラグビーは、常にケガのリスクがつきまとう。選手交代には慎重さと大胆さの、ギリギリのバランスが求められる。
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「替えるタイミングを見極めるとき、僕が判断の基準にしているのは選手の顔色です。ただ、これは自分で実際に見ないと分からないんです。インカムでピッチサイドにいるスタッフに聞くとたいてい『疲れてる。替え時かも』という答えが返ってきます。でも実は、疲れているときのプレーに選手の個性が表れるんです。疲れたときにがんばれる選手は、実は疲れているときこそ一番いいパフォーマンスをすることが珍しくない。逆に『やれます!』と言ってるのに、実際のプレーではあきらめの早いヤツもいる。そのへんは、普段から選手の性格を、そして疲れが顔色にどう出るかを観察している監督・コーチが直接見ないと分からない。その点、双眼鏡で選手の顔色を観察できると、より的確に交代できるんです。実際、双眼鏡を使うようになってから、あとで選手に『いいときに替えてもらえました』と言われることが増えました」

もうひとつ、双眼鏡が活躍しているのは、ブレイクダウンと呼ばれる接点の攻防についてだ。

ラグビーの監督・コーチは、スタンドの上段から試合を見ることが多い。たとえば東京の秩父宮ラグビー場では、メインスタンドの最上段に陣取る監督が多い。ワールドカップなどでは、多くの指揮官がスタジアムの中段か上段にある監督室から目を光らせる。試合はやや高い場所から、俯瞰して広く見た方が、エリア(陣地)の進め方、ボールの動かし方、相手のアタックに、あるいはディフェンスに、チームがどう対応できているかをとらえやすい。
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「ただ、個々の局面がうまくいっていないとき、たとえばブレイクダウンで劣勢になっていることの原因は分からないんです。そこを修正するにはクローズアップして見て、原因を知らないと、選手にかけるべき指示を間違えかねない。

苦戦しているときこそ勝負所ということはよくあるし『オレたちの圧力は効いているぞ』『だから我慢どころだぞ』などと、選手が勇気を持てるような声をかけることができます。双眼鏡を使って、試合の進んでいる様子をアップで見ることで、選手にかける具体的なコメントの根拠を見つけられるんです」

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高橋さんの愛用モデルはアリーナH8×21WPのイエロー

高橋さんはもうひとつ、試合の指揮だけではない双眼鏡の魅力を感じているという。

「試合のときの選手の真剣な顔を見られるんです。選手には、試合の最中しかみせない顔がある。恥ずかしいとか、格好つけようとか、余計なことを一切考えていない、勝負に没頭している顔。これは練習とゲームでは全然違う。やっぱりコンタクトスポーツならではだと思うんです。闘志の表情への現れ方が全然違う。コーチとして見ていても、いい顔してるなあと思いますよ。僕自身、自分が現役の時に、相手の選手が目の前にいたときしか見たことがなかった。これは選手だけの世界なんです。

それを、双眼鏡があると生で見ることができるんです。僕は、選手の親、家族にぜひ見て欲しいと思いますね」

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それは、親だけでなく、ファンにとっても同じだ。激しいコンタクトを繰り返しながら、15人がひとつになってチームの勝利のために戦うラグビー。選手たちの真剣なまなざしを、遠くからでも目の前にいるように感じられる。

双眼鏡は、指揮官にとっても、観戦者にとっても、ラグビーを見るための必携ツールといえるだろう。
双眼鏡で広がる世界 「ラグビーを見る」 スポーツライター | 大友 信彦

双眼鏡で広がる世界

「ラグビーを見る」

スポーツライター | 大友 信彦

30年近くラグビーを追い続けている、スポーツライターの大友信彦さん。ボールを奪い合う密集の中の激しい攻防や、ふと見せる選手の表情のなかにテレビには映らない見どころがある。

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