Vixen の科学情報誌 So-TEN-Ken(ソウテンケン) WEB版

この秋の星空ビッグイベント
9.7-8皆既月食と11.24土星の環

2025年の秋は約3年ぶりの皆既月食が全国で見られます。
双眼鏡があると感動は倍増だけど、道具がなくても肉眼で十分に神秘的体験は可能。
また環のある姿が魅力の土星から環がなくなる!?というレアな体験も11月に。
この秋はなにやら夜空が騒がしいゾ!

画像:2022年11月の皆既月食

<2022年11月の皆既月食>
神秘的な赤銅色が浮かび上がった。皆既月食の直前直後(食分が深い)では、月面に太陽光が当たっている明るい部分と本影の境界付近、本影の中心方向にかけて美しいグラデーションが観察できる。この画像は多段階露出した複数カットをHDR合成。
撮影 : ©井川俊彦(2022.11.8)

9月7日25:27スタート!
天体望遠鏡、双眼鏡、手ぶら。観察のコツ

イラスト:A

<A_9月8日皆既月食の進行>
月の高度と方角は東京の星空の場合。経過時刻はどの地域で見ても同じ。参照 : 国立天文台

2025.9.8 皆既月食 タイムテーブル

<2025.9.8 皆既月食 タイムテーブル>
※天文薄明:太陽が地平線より12〜18度下にある。空はまだ暗く、肉眼で6等星まで見えるぐらい。(月明がなく、天の川が見えるような観察地の場合)
※航海薄明:太陽が地平線より6〜12度下にある。1〜2等星の明るい星が見える。

まずは道具を使わず手ぶらで

部分月食が始まるとまぶしいほどの満月が端から少しずつ影に入り、暗い部分が増えていきます。皆既月食になると月が全て影に入り、全体的に暗く赤黒く変わります。その行程はとても神秘的で、息を飲む美しさ
またいつもの満月では明るくて周りの星が見えづらいのですが、皆既月食になると一転、月が本来の輝きを失うため夜空が暗くなって周囲の星々がわーっ!と輝いて見えてきます。今回、月食中の月はみずがめ座にあって、左上に土星、左下にうお座の1等星フォーマルハウトも見えますよ。

双眼鏡で見よう

月全体とその周りが1つの視界に入るので、双眼鏡は皆既月食にオススメ
部分月食が少しずつ進む様子がとてもよく見え、部分的に赤黒く変わり始めることにも気づくでしょう。

天体望遠鏡で見よう

天体望遠鏡を使えば、迫力たっぷりでさらに細かな観察ができます。倍率は低めの50倍前後で、月全体が視野に収まるくらいがオススメ。
注意深く観察すると、欠け際に沿ってターコイズ・フリンジと呼ばれる帯状の青い光が見えるかも。青っぽくなる理由は、地球の大気のオゾン層を通り抜けた光に照らされるため。皆既月食の直前・直後くらいの月面のグラデーション(色味と明るさの変化)を注意深く観察してみましょう。

皆既月食の基本の「き」。これは覚えておこう!

イラスト:B

<B_月食が起こるしくみ>
本影は濃い影、半影は薄い影。天体の大きさや距離はデフォルメ。

イラスト:地球の影を通過する月のイラスト

<地球の影を通過する月>0:28から5:55の様子

地球の影を通過する月の画像

<地球の影を通過する月の画像>
2022年皆既月食の組写真。撮影 : ©井川俊彦(2022.11.8)

宇宙には地球の影ができている

天気の良い日、太陽に照らされて地面に人や物の影ができるように、宇宙には太陽に照らされた地球の影ができています(イラストB)。この影の中に月が入ると月食となります。

月食になるには?

地球の影に月が入るのは、太陽と地球と月が一直線上に並んだとき。それならば地球の周りを公転している月は満月の度に毎回月食になっても良さそうですが...。実際には1年に平均1.4回しかおきません。これは太陽の周りを公転する地球の軌道面と、月が地球の周りを公転する軌道面が約5°傾いているためです。地球から見て、月が太陽の反対側にある満月の日でも、そのほとんどは太陽─地球─月はぴったり一直線になっていないのです。

皆既月食が赤黒く見えるのは?

地球の影に入った月は黒くなりそうですが、実際はオレンジ〜赤黒に見えます。これは地球を包んでいる大気の層を太陽光が通過するときに散乱・屈折して、朝焼け・夕焼けと同じ原理で赤色系の光だけがわずかに通過してくるため。赤い光が地球の影の中に入り込み、真っ暗であるはずの皆既月食中の月をほのかに赤く照らすのです。
また地球大気の中を漂う塵[ちり]が多い、一般的に「空気が汚れている」と言われる状態だと月は暗く赤黒い色になり、塵が少ないと明るくオレンジになるので、今回の皆既月食がどれくらいの色になるか、しっかり観察してみましょう。

11月24日、土星から再び環が消える!?

画像:2025年5月、環がほとんど見えなくなった土星

<2025年5月、環がほとんど見えなくなった土星>
撮影 : ©阿久津富夫(2025.5.14)

9月21日に土星は、もっとも観察しやすい衝[しょう]を迎えます。このとき太陽─地球─土星(外惑星)が一直線上に並んでいて、夜通し観察することができ、地球からの距離も近くなっています。衝の前後3か月ぐらいは観察に適した期間が続き、2026年1月ぐらいまで観察可能です。
この土星、2025年3月には地球から土星を真横から見る状態になって、厚みのあまりない環はほとんど見えなくなりました。また5月には太陽光が土星の真横からあたることになり、環は厚みがないため光に照らされる部分が少なく、やはり見えなくなりました。そして11月24日、再び地球から土星をほぼ真横から見る角度になり、環がほとんどなくなった状態になります。3月と5月は土星が太陽に近い方角にあったため観察が難しかったのですが、この11月はバッチリ! 衝のわずか2か月後なので日没後、空が暗くなるにつれて南東の空に姿を現し、19:00過ぎに真南の空へ。深夜1:00頃に西へ沈むまで観察できます。

※時刻は東京を基準としています。

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