Vixen の科学情報誌 So-TEN-Ken(ソウテンケン) WEB版

素敵な星夜の神話(ストーリー)
オリオン座とベテルギウスの命

何気なく見上げた夜空の、星座の形がわかったり、星にまつわる神話が思い浮かんだり、ちょっとしたウンチクを知っていたり...。
それができたら、星空は何倍にも楽しくなる!
さあ、これを覚えてオリオン座を見に行こう!

画像:オリオン座

<オリオン座>

アルテミス、アポロンの策略によってオリオンを射る!!

オリオン座は、狩人オリオンが右手にこんぼう、左手に獅子の毛皮を持っている姿とされています。
オリオンのお父さんは海の神ポセイドンで、オリオンは海の上を歩くことができました。
以前は乱暴者だったオリオンですが、失明するなど痛い目に遭い、すっかり改心して、月と狩りの女神アルテミスと親しくなります。しかしアルテミスの兄アポロンは、2人の仲を良く思っていません。
ある日、アポロンは、海の上を歩いているオリオンを見つけ、遠く沖まで行ったのを確認してから、アルテミスに「あの的に矢を命中させてごらん」とオリオンの方を指さします。アルテミスは狩りの女神。それがオリオンの姿とは知らず、見事に命中させてしまいます。
後に岸へ打ち上げられたオリオンの遺体を見て、アルテミスは激しくショックを受けます。そして大神ゼウスに「オリオンを夜空にあげてください。私とまた会えるように」とお願いしました。それでオリオン座は月の通り道、白道[はくどう]の近くにあるのです。

※ 神話には諸説あります。

現実でも絶命が迫る!? ベテルギウス

オリオンの右肩でオレンジ色に輝くベテルギウス。その直径はなんと太陽の約750倍、重さは16.5〜19倍ぐらいと言われています(※1)。
恒星は質量で寿命を推測でき、ベテルギウスはもう星の寿命が迫っている状態。すでに明るさが変化する不安定な時期に入っていて、約半年から13か月ぐらいの周期で明るさが変わっています。
このベテルギウスがいつなくなるのか、あるいは、約640光年離れた星なので、実はすでに消滅しているのかも...という憶測が飛び交っていましたが、2021年の研究発表で、あと10万年以上は生きられそうだと明らかにされました。
恒星は寿命が尽きるとき、超新星爆発と呼ばれる大爆発をし、残骸が宇宙に飛び散るのですが、この様子を私たちが見られる可能性がなくなったのは少し残念ですね。それにしても、オリオンの悲劇とベテルギウスに残された命、なんだか重なって、オリオン座がちょっと切なく見えてきます。

※1...2021年2月に東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構から発表された論文に基づく。